夏に生まれて夏に消えた幻のひまわり
モネの水連やルノアールの春のブーケなど、花が描かれた名画は数多くありますが、日本人にもなじみの深い世界的な花の名画といえばゴッホの描いた「ひまわり」が挙げられます。
このゴッホのひまわりはおなじモチーフで7点制作され、うち2点は日本人が落札・購入しました。
1点はバブル期に安田火災海上(現・損保ジャパン)が約53億円で落札し、現在でも日本のSOMPO美術館(元・東郷青児美術館)で見ることができます。
もう1点は、かつて実業家の山本顧彌太がスイスにて7万フラン(現代の価格で約2億円)で購入し、山本の自宅の芦屋に飾られていましたが太平洋戦争末期の空襲を受けて焼失してしまいました。
この幻の芦屋のひまわりには他の6点にはない特徴があります。それは、唯一花瓶にささっていないひまわりが二輪手前に描かれているのです。
今回の佐藤俊輔FLOWER STYLEのテーマは「花瓶にささないひまわり」。
大きさや種類の違うひまわりを複数使って、夏にぴったりなひまわりのリースを作ります。かつてゴッホがひまわりを花瓶にささずに置いて飾ったように、自由な感覚でリースにひまわりを飾り付けましょう。
芦屋のひまわりがゴッホによって描かれたのが1888年8月、阪神大空襲が57年後の1945年の同じ8月。夏に生まれて夏に消えた幻のひまわりに思いをよせてー
暑い夏に輝く手作りひまわりリース。
「佐藤俊輔のFLOWER STYLE vol.7」始まります。
生花×造花×ドライ=セミフレッシュアレンジメント
使用する生花の花材はこちら。
左から、ヒマワリ東北八重、ヒマワリパナッシェorゴッホ、姫ヒマワリ(旭)、中里園芸のジニア(ジャジーミックス)、SPバラ(ラディッシュ)、ニゲラの実、リューカデンドロ、岡野さんのユーカリ(シルバーウェーブ)、それぞれ5~6本程度が適量です。
その他の花材はこちら
左から、YDM60cmリース、ウッドマテリアル、サンキライリース7cm、大麦、アートピオニーショート、レイラクリスマスローズ、アイラスイトピーピック、フォックステイルピック、YDM35cmリース、バインメープルアイビー、FIANユーカリ、ユーカリブッシュ(グリーン)、ユーカリブッシュ(セージグリーン)、リース類やマテリアル、大麦はそれぞれ1つor1袋ずつ。ピオニー、クリスマスローズは5~6輪程度。ピック類は3束程度。造花のグリーン類は3本程度が適量です。
生花と造花、ドライなどの花材を一緒にアレンジする、サトウシュンスケフラワーデザインオリジナルの「セミフレッシュアレンジメント©」。今回は水につけずにそのままドライになる生花を選んでアレンジする「セレクト法」です。
佐藤が選ぶMVP花材「ヒマワリ東北八重」
ヒマワリといえば子供の背丈を超えるほど大きさのイメージがありますが、1991年に花形が美しく扱いやすい品種のサンリッチが登場したことを先駆けとして、現在まで様々な品種が生み出されてきました。黄色と黒の定番カラーに加えて、オレンジやブラウン、ホワイトなどのカラーや一重から八重、大きいものから小さいものまでさまざまですが、今回おススメしたいのはこの東北八重です。名前にもなっている細かい八重咲の特徴に加えて、中心部まで黄色い花弁がびっしり咲いているのでとても明るい印象になります。花占いをイメージしていただくとわかりやすいのですが、一般的な一重のヒマワリは、一枚でも花弁が取れてしまうと綺麗な形を成さなくなってしまいますが、この東北八重は一枚くらい花弁が取れたくらいではびくともせずに、キレイな状態を長く楽しめますよ!
STEP1.リース×リースでダブルリースに
リース作りにはリース土台をどうするかが重要なポイントになりますが、今回は茎に絡ませるだけで簡単に取り付けられる、針金の入ったモール型の葉が集まっているリースを使用します。
35cmの小さいほうのリースのモール型の葉をかき分けて、円を形作っている太いワイヤー一カ所を切断します。
切断したリースを60cmのリースに引っ掛けます。
切断した部分をリースの下側に持ってくるようにすれば、小さなリースが外れて落ちることがありません。
鎖のようにつながっています。これでダブルリースの土台は完成です。
STEP2.花がなくてもグリーンだけで形も見た目も美しいリースへ
フラワーアレンジメントは花を挿す前のグリーンのセッティングが大切ですが、リースも同じです。たとえ花がなくてもグリーンだけで形も見た目も美しいリースがまずできれば、あとは成功したも同然です。
ウッドマテリアルをリースに絡ませるために、まずはウッドマテリアルに切り込みをいれます。
茶巻の28番ワイヤーを半分に折り曲げ、切り込みを利用してウッドマテリアルに巻き付けます。
取り付けたワイヤーを利用して、リースの葉に絡ませていく。これ以降のすべての花材も同じですが、リースの正面からみえる部分のみではなく、内側や外側など180°まんべんなく花材を取り付けましょう。
続いて、ユーカリやアイビーなどの造花の葉物とドライの大麦を長さ10cm~12cm程度に切り分けます。
切り分けた葉物や大麦をリースの葉に絡ませていく。このときに葉の方向がリースに向かって時計回りもしくは反時計回り、どりらか一方になるように作るとまとまりがでます。
今回は時計回りになるように材料を入れてみました。生花のユーカリ、リューカデンドロも同じように切り分け、絡ませていきます。
いかがでしょうか?この状態で飾ってもいいと思えるくらいに形やバランスに気を配ってみてください。今回はグリーンの種類が多いので特にグルーピング(同じ種類の花材を固めて配置すること)などを意識せずに、すべての材料をまんべんなくちりばめましょう。
STEP3.グリーンのキャンバスにヒマワリの黄色を置いていく
まずは顔が大きく目立つヒマワリから。茎を10cm程度に切り、リースに取りつけていきます。
上から見たり離れてみたりしてバランスを見ながら取り付けます。
大きなヒマワリを付け終わったら、小さなヒマワリ、ジニア、バラ、ニゲラと取り付けいきます。
生花をすべて飾りつけたら、造花のピオニーとクリスマスローズをカットし、スイートピーとフォックステイルのピックはカットせずそのままでリースに絡ませます。
最後に、サンキライリースをカットしてほどき、つる状に戻したものをリース全体に絡ませます。サンキライが巻き付くことでナチュラルな雰囲気になるだけでなく、花材に絡まることで抜け落ちなどを防ぐことができます。
ゴッホもあこがれた日本のひかり
いかがでしょうか?グリーンで作ったリースのキャンバスに、皆さんはどんな風に黄色やピンクの色彩をのせていくでしょうか。
ゴッホは熱心な浮世絵コレクターとしても知られています。浮世絵は西洋絵画と違って陰影をつけずに描かれているため、ゴッホは浮世絵の舞台である日本を太陽の光が燦燦と降り注ぐ土地と考え憧れていたとも言われます。
日本は過去に大切なひまわりを失ってしまいましたが、ひまわりを愛する心は失われずに今日までたくさんの新しいひまわりの品種を生み出してきました。
絵画のようにグリーンのキャンバスに輝く黄色で描くひまわりリースー
夏バテにも負けない元気いっぱいの色彩から始める花のある暮らし「佐藤俊輔のFLOWER STYLE」次回もお楽しみに!
こちらは撮影から5日後のリースの様子です。ひまわりがドライになってきてしっとりと落ち着いた雰囲気になってきました。
時間の経過で変わっていくリースの表情を眺める、特別な夏をぜひお過ごしください。
佐藤俊輔のインスタグラムでは撮影時のオフショットなども掲載しています。
7月7日より、文藝春秋が発行するライフスタイル誌「CREA」の公式サイト「CREA WEB」にて佐藤が提案するフラワースタイルの掲載がスタートしました。こちらの撮影でも「はなどんや」さんのお花を使用しています。
https://crea.bunshun.jp/articles/-/27013
この記事を書いた人
- フラワーデザイナー 佐藤俊輔
- フラワーデザイナー。2014年モナコ国際親善作品展国内選考会において特別賞を受賞。2017年より「女性自身」(光文社)、2020年より「CREAWEB」(文藝春秋)にて季節のアレンジメントを連載。テレビ、ラジオ出演のほか伊勢丹メンズ館のディスプレイ装飾など、幅広く活躍中。
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