一日だけの”母の日”から一か月の”母の月”へ
カーネーション栽培の歴史は古代ギリシャまでさかのぼれるといいます。カーネーションがこのように永く愛される理由は美しさはもちろんのこと、そのタフさにあるような気がします。少しくらい花弁を触っても、少しくらい茎が折れても、少しくらい水が切れても、傷むことなく咲き続ける姿はとても頼もしいものです。
今回の佐藤俊輔のFLOWER STYLEのテーマは、前回に引き続き母の日特集。
「今年こそ自分で作る!あふれるカーネーションを届ける母の月手作りブーケ」
通常、母の日はお花屋さんが一年で一番忙しい日ですが、今年は日本花き振興協議会では母の日前の数日間の生花店店頭での混雑や宅配便の集中による混乱を避けるために、「母の日」を一日だけでなく一ヶ月に分散する「母の月」とする取り組みを始めています。
カーネーションはとても長持ちするお花ですので、日々のお手入れ次第では2~3週間ほどお花を綺麗な状態で楽しめます。今年の母の日は少しフライングしたり、少しゆっくり目にしたり、何度もお花を渡したり、一日にとらわれない自由な方法で感謝の気持ちを伝えてみるのもいいかもしれません。
そんな花に関わる方々にとって初めて訪れるかもしれない、あせらない母の日。贅沢な五月の時間を使って、カーネーションブーケを手作りして、思い出に残るプレミアムな母の日ギフトに挑戦してみませんか?デザイン的にもバラやユリ、マムなどの華のある花を入れずにカーネーションをメインにして花束を作るのは、難易度が高いです。今回は簡単にできるカーネーションデザインのポイントもお伝えしていきたいと思います。
一日にとらわれないで、好きな時に自由に何度でも贈る―
カーネーションをまっすぐ届けるプレミアムな母の月手作りブーケ
佐藤俊輔のFLOWER STYLE vol.5はじまります。
生花×造花×ドライ=セミフレッシュアレンジメント
使用する生花の花材はこちら。
左から、シースターファン、アップルミント、ホワイトペパーミント、クリスタルキャンドル、SPカーネ(濃いピンク)、SPカーネ(ミニティアラピンク)、カーネーション(ミネルバ)、カーネーション(アンティグアorハリケーン)、カーネーション(コットンキャンディ)、スナップ(ピンク)、アジサイ(アンティークブルー)、アジサイ(アンティークグリーン)、クリスマスローズ(ピンク~パープル)、ライラック(ピンク~パープル)、カーネーションや葉物は6~8本ずつ、あじさいは各々1本あれば適量です。
■カーネーションデザインのポイントNo.1「サイズや形の違うカーネーションを複数チョイスする」
カーネーションは、通常のカーネーションとスプレーカーネーション(枝分かれしているもの)に大別できます。通常のカーネーションもさらに細かく、大輪系・中輪系・小輪系に分けられ、スプレーカーネーションも通常のスプレーカーネーションとナデシコ系のスプレーカーネーション(一重や先が尖ったものなど繊細な花びらが付いているもの)に分けられます。これら5つのタイプのカーネーションを意識して、できるだけ多くのタイプのカーネーションを使用することがポイントです。
それぞれ花先や葉先から10cm程度よりも下についている、下花・下葉を取っておきます。
その他の花材はこちら。
左から、ラフィアファイバー(コゲ茶)、ラフィアファイバー、ワタカラ、ユーカリスプレー(ダークグリーン)、ユーカリピック(グリーン)、細葉ユーカリ(PP/GR)、細葉ユーカリ(グリーン)、ラノーラユーカリ(グリーン)、ユーカリ(フロストグリーン)、アロンユーカリブランチ、ユーカリは1本ずつ、ラフィアはそれぞれ10本程度、ワタカラは一袋が適量です。
生花と造花、ドライなどの花材を一緒にアレンジする、サトウシュンスケフラワーデザインオリジナルの「セミフレッシュアレンジメント©」。第一回から第四回まで、「セパレート法」、「ベース法」、「セレクト法」、「ラッピング法」と様々な技法をご紹介してきました。今回は、造花のグリーンに自然素材をつけて加工することでより自然のグリーンに近づけてアレンジする「グリーン法」をご紹介します。
佐藤が選ぶMVP花材「スナップ(ピンク)」
使用した花材の中で毎回佐藤のお気に入りのMVPを紹介するこの企画、第5回目はスナップ(ピンク)です。
ただのスナップなのになぜ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、スナップは一本でボリュームがあり工夫次第で色々な使い方ができるんです!写真のスナップは咲いている花をすべて取り、蕾のみを残している状態です。スナップは下の花には色がついていますが、上の方に行くにつれて色が薄く白くなっていきます(※品種によって色のつき方が違うものもあります)。スナップは意図的に花を落とす一工夫するだけで、上の蕾と白い小花を楽しむ方法と、真ん中から下のピンクの花だけを楽しむ方法、両方を残して楽しむ方法と三通りの方法が楽しめます。
■カーネーションデザインのポイントNo.2「カーネーション以外に赤とピンクの花は使わない」
”カーネーションがメイン”の花束を作るためには、主役になる恐れのある花を抑える工夫が必要になります。今回のように花の種類としては地味なスナップでも色が赤やピンクとなると目立ちすぎてしまい、一緒に束ねるとただの”カーネーションを使った”花束になってしまいます。アレンジの主役となる種類の花(バラやユリなど)を使わないだけでなく、赤やピンクの色は脇役の花といえどカーネーション以外使わないのがポイントです。
落としたスナップのピンクの花は、同じく下花として処理したカーネーションと一緒にお皿に並べれば、可愛いキッチンアレンジとして活躍します。キッチンアレンジの詳細は佐藤俊輔のFLOWER STYLE vol.2で紹介しています。
STEP1.造花ユーカリを使って、生花よりナチュラルなハイブリットユーカリへ
①アジサイ二種を3~4cmの小さな束に切り分けます。
②26番茶ワイヤーとラフィア二種類を絡ませます。
②を使ってワタカラにアジサイをつけていく。
③②を団子のように3つ作り、余ったラフィアをカットする(ワイヤーの長さにあわせてカットする)。
④ラフィアが絡んでいるワイヤーを利用して、造花のユーカリの茎や葉に落ちないように絡ませる。
⑤自然素材のワタカラがついたハイブリットユーカリの完成です。
ワタカラに小さくカットしたアジサイをつけているので、生のアジサイではありえない細かい束でのアレンジが可能です。アジサイはそのままで自然とドライフラワーとなりワタカラとの馴染みもよくなります。
STEP2.スパイラルにこだわらない、スパイラルテクニックデビュー
下葉を処理した花材を種類ごとにならべたいよいよ花束作りの始まりです。
花束の基本テクニック、スパイラルテクニックで束ねていきます。スパイラルとは螺旋という意味、螺旋状に花を重ねていくことで綺麗な花束を作ることができます。右利きの人は最初の一本を左手で持ち、右手で二本目を取り二本目の花先が左上、茎先が右下にくるように重ねていきます。重ねたら一度お花全体を真上から見て反時計回りに30度ほど回転させて、次の三本目を同じように花先が左上、茎先が右下になるように重ねていきます。左利きの人はすべての手順を逆にしてください。
それを繰り返していきます。花→蕾or小花→花→葉→花→、といった具合に同じ花材が重ならないような順番で繰り返します。最初の一本を中心としてぐるりと花材を一周させて円を作り、その円を二周三周とどんどん大きくしていくイメージです。
斜めに重ねていくのは、花束の作りはじめが一番難しく、ある程度束になってからは簡単にできます。スパイラルテクニックが上手くできない人には、最初の2~3本をスパイラルにせずまっすぐに束ねて、まっすぐに束ねたものを軸として斜めに重ねていくのがおすすめです。最初の数本が斜めになっていなくても花束としては問題ありません。スパイラルテクニックデビューを成功させるコツはスパイラルにこだわらないことです。
STEP3.あふれるカーネーションをギュッと束ねて
花材の円をある程度大きくしたら、真上から花束を眺めてみて円が欠けているところに花材を足して綺麗な円になるようにします。この時に隣り合う花材と違う花材を使うことを忘れずに。
■カーネーションデザインのポイントNo.3「高低差と高度差をつける」
上から見たときの形が綺麗な円になっていれば、花の頭が飛び出したり中に入ったりしている”花の高低差”は適度にあってもかまいません。カーネーションデザインでは、大輪のカーネーションはとても目立つので他の花材よりも少し内側に入れ込むとバランスが良くなります。逆にスプレータイプやナデシコタイプを飛び出すように入れると、動きのあるブーケになっておススメです。また、フラワーアレンジでは花束を山に見立てた時に山頂部分の花が目立ち、裾の部分の花が目立たないという特徴があります。これが”高度差”です。山頂部分には小花系を、2合目~3合目付近には大輪系を多く入れましょう。山頂部分に小花が集まっていることで全体の花の本数を多く見せる効果もありますよ。
花束が出来上がったら、周りをシースターファンで覆って花をカバーしてあげましょう。このときに適度にユーカリも混ぜて、カバーしている葉が一種類で目立ってしまわないように気を付けます。
麻ヒモで茎を縛って完成です!
いかがでしょうか?カーネーションデザインの3つのポイント
「サイズや形の違うカーネーションを複数チョイスする」「カーネーション以外に赤とピンクの花は使わない」「高低差と高度差をつける」
の一つ一つができているか確認してみましょう。
カーネーションデザインは、美しさとタフさを併せ持っていますので、花束作りに何度失敗しても、強く握りしめすぎて茎が暖かくなっても、傷むことなく最後にはきっと綺麗な手作りブーケが出来上がっているはずです。
一日にとらわれないで、好きな時に自由に何度でも贈る―
誰かを想って作る花束からはじめる花のある暮らし「佐藤俊輔のFLOWER STYLE」次回もお楽しみに!
二回に渡ってお届けしてしてきた母の日特集いかがでしたか?
お陰様で前回ご紹介した「HANA CUBE」のご自宅で作れる母の日ギフトの小さなインテリアもご好評いただいております。おうち時間、家族と過ごす時間を造る”造花”のインテリア「HANA CUBE」も併せてぜひご自宅でお試しください。
また佐藤俊輔のインスタグラムでは撮影時のオフショットなども掲載しています。
この記事を書いた人
- フラワーデザイナー 佐藤俊輔
- 2014年、モナコ国際親善作品展国内選考会で特別賞を受賞。
2017年より「女性自身」にて季節のアレンジメントを連載。
テレビ、ラジオ出演のほか百貨店の装飾など幅広く活躍中。
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