使っている花:クレマチス、スモークグラス、シャクヤク、ルリタマアザミ、アネモネ、アスチルベ、ニゲラ、バラ(ラディッシュ、エクレール)、コットンブッシュ、ライスフラワー、マトリカリア、キク、スターチス ‘エミール’、トリフォリウム・ルーベンス ‘ツインキャンドル’、スカビオサ、デルフィニウム、オレガノ(ケントビューティー、ディクタムナス)、アゲラタム、シャグマハギ、以上すべてドライフラワー
Dried Flower はながら
岐阜県、山県市。豊かな自然に恵まれ、日常生活の圏内に山と川があります。
この地に、月に一度だけ開くドライフラワーの専門店「はながら」があります。
店主のさわださわこさんは、家族4人でこの地に暮らしています。
ブライダル関連の生花店で、ガーデンウェディングなどに携わったのち、
岐阜市の雑貨店でリースの委託販売を経験。
2011年10月に現在の場所に開業しました。
毎月第1日曜日になると自宅の一部を店舗として開くほか、
イベント出展やオーダーメイドの商品制作などがおもな活動。
SNSを見て足を運ぶお客様がほとんどで、県外から訪れる人もいるそうです。
来た人が自らのSNSで情報発信をすることで、よい宣伝となっています。
自ら乾燥させたドライフラワーを使って
ドライフラワーで制作した、ウェディングブーケと花冠(はなかんむり)。
さわださんが、自ら乾燥させたドライフラワーを使用。
色が美しく残っているものだけを厳選し、美しい配色でまとめています。
ウェディングブーケは、多種のドライフラワーを使用しているのが特徴。
丁寧に組まれたスパイラルのステムと、ブーケの美しいラウンド形は、
さわださんが花店で培った経験によるもの。
ウェディングに特化した花店勤務で身につけた
生花の技術をドライフラワーに応用しています。
ドライフラワーは生花に比べ、時間をかけて制作することができる反面、
折れやすいという弱点もあるので、
これだけのスパイラルを組んでいくのは集中力と経験を要します。
ドライフラワーの花冠は、ウェディングブーケとセットで使用するもの。
どんなドレスの色にもよく合う、主張しすぎない色でまとめています。
使用花材は、ブーケに使用したものとほぼ同じですが、
大きな花は入れずに細かい花でつながりを見せています。
ブーケに合わせたニュアンスカラーがポイントです。
ベースとなった蔓は山で採取した自然素材
大きさの違う実ものを合わせたドライフラワーのリース。
ベースの蔓は、秋から冬にかけて
近くの山や河川敷などから採ってきたもの。
その採取は、鳥との戦い。
実が赤く色づいたタイミングを見はからって採りに行くそうですが、
遅くなると鳥に食べられてしまうからです。
さりげなく店名が書かれた看板。
その由来は、
「ひと言の平仮名で探していましたが、
なかなかしっくりくるものがなく、
そんな時に子どものはながらの服を見て、すぐに決めました」とさわださん。
庭に、パンを焼くための窯があります。
自然のものを使用した食に興味があるというさわださん。
自家製味噌を作ったり、クワの実でジャムを作ることも。
はながらのある山県市は、岐阜市の北に位置する自然豊かな場所。
広い敷地を生かしてドライフラワー用の植物を育てる一方、
鶏を飼ったり、オリーブなどの果樹を植えたりしています。
玄関前に積み重なっているのはストーブ用の薪。
俗に雑草と呼ばれている植物でもドライフラワーはできます。
写真は、2年ほど前に制作した、ヒメコバンソウのブーケ。
他の植物は一切使用せず、スパイラルで組んでいます。
道端でよく見かける植物ですが、ドライフラワーで使おうと思った場合、
きれいな状態で採れるタイミングは限られるのだそう。
下処理の手間が大変なので販売はしていないそうです。
このブーケのように、乾燥させると色がなくなる(茶色くなる)ものは、
基本的に商品には採用しないそうですが、
さわださん自身は色がないのも好きで、
お客様の中にも気に入ってくれる人は多いそうです。
店内の全景。清潔な木目調の一軒家。
高い天井を見上げると、
柱にたくさんのドライフラワーが吊り下がっていました。
風通しがよく、梅雨でも湿気が少ないため、
真夏以外は空調を使用しないそう。
壁は、吸湿作用がある火山灰シラスの材質を採用しています。
はながらの魅力は、この場所であるとさわださんは話します。
「自然の中で心地のよい空気を吸いながら、買い物を楽しんでもらえること。
また、自宅であることから、お客様に私たちの暮らしを垣間見ていただけて、
それが親しみやすさにつながっていると思います」
飾るシーンを想像しながら、一輪、一輪手にとって、
どれを選ぼうかと悩むお客様がいる。
長く飾るものなので、本当に自分の好きなものを選びたいと、
皆、真剣です。
現代の暮らしとマッチした提案ができるのも
ドライフラワーならではのよさです。
市場で仕入れた生花を自宅でドライフラワーにしています。
ハスや、チューリップ、オレガノなど種類が豊富。
なかには、アジサイやスモークツリーのように自分で育て、
収穫したものも。
店舗からは、リビングの薪ストーブが見えています。
冬は乾かす量も増える季節。ドライフラワーがきれいに作れる環境と、
薪のストーブには、関係性があるのではないかと、
さわださんは考えています。
取材で訪れたのが真夏だったため、花は少なめ。
通常はもっと乾かす量が多いそうです。
「店内は春が一番鮮やかです。春の花材には色が美しいものが多いので」
とさわださん。
木製のドライフラワー専用の花器。
はながらで、ディスプレーに多用されています。
ろくろをひいて作ったもので、「魚安家具」の安井敦彦さんの作品。
text&photo/月刊フローリスト 撮影/岡本修治
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