スクエアよりも柔和なラウンドボックスアレンジメント
色とりどりのイルミネーションが輝くこの季節ですが、日本の年末年始を華やかに彩ってくれるものといえばおせち料理が挙げられます。
デパートには、有名ホテルや有名シェフがプロデュースしたおせちがずらりとならび、和だけにとどまらない洋食や中華などバラエティーに富んだラインナップは、見ているだけでワクワクしてきます。
そんな日本の年末年始には欠かせないおせち料理ですが、そのはじまりは弥生時代にまで遡り、季節の変わり目に収穫を感謝して神様にお供えした料理が起源になっています。季節の変わり目ですので、桃の節句、端午の節句、菊の節句など年に何度もおせち料理が活躍してきましたが、お正月料理として重箱に詰めるスタイルが定着したのは江戸時代後期になってからです。
おせち料理の内容にはそれぞれ意味やいわれがあり、数の子は子孫繁栄を、田作りは五穀豊穣、栗きんとんは金運などを願って入れられることは広く知られています。
はるか古代から、さまざまな願いや想いを器に詰めて、芸術的な料理を作ってきた日本。そんな歴史に思いをはせて―
今回のテーマは「おせち料理スタイルの新春アレンジメント」
お花の柔らかな曲線になじみやすいラウンド型の器に、お花で円を描いて作る、柔和なボックスアレンジメントです。色々な種類の花に、新年への色々な願いを込めて、「佐藤俊輔のFLOWER STYLE vol.10」スタートです。
柔和を演出する花材のセレクトする
使用する花材はこちら。
左から、ミニボールマムバンドルピンクミックス、ミニピンポンマムピック、サリューブバリアブーケ、メリルジプソバンドル、ポンポンマムバンチライトピンク、ブバリアバンドルホワイト、メリルジプソバンドルホワイト、ポンポンマムバンチクリームホワイト、ポンポンマム×6クリームホワイト。
ドライフラワーの花材はこちら。
左から、Aリーフ、ペッパーベリーピンク、ペッパーベリーアイボリー、クリスパム白、クリスパムシルキーピンク。
その他の花材はこちら。
今回は花で円の模様を描くために、顔の小さなものをセレクトしています。メイン花材のマムも直径3~3.5cm以下のものをセレクト。また、クリスパムのようなごく小さな花材が円などの模様をくっきりと美しく描くために必要です。
STEP.1緻密なブリック&グリーンセッティングを
佐藤俊輔FLOWER STYLEの中でも何度かお伝えしましたが、綺麗なアレンジメントを作るには、綺麗なブリックセッティングと、グリーンセッティングが欠かせません。花を挿す前の作業にこだわってアレンジメント作りをしてみましょう。
ブリックを縦に半分にカットします。
横に並べて、器に押し付けて、型を取ります。
型よりも少し小さくなるように(のちほど、器とブリックの間にリーフを入れるため)ブリックカッターでカットしていきます。
ブリックを器に入れ、茎をカットしたAリーフを器とブリックの間に差し込む。
オアシスの高さではなく、器の高さまでリーフで隠れるように、上に重ねていれていく。
コップやお皿などを使用して、器の中に一回り小さな円を中心からずらして、一つ描きます。
今回は器の中に大きな円を一つ描いていますが、小さな円を三つ描いても同じ材料で作ることができます。
STEP.2下絵に沿って色を付ける、花の塗り絵
ブリック&グリーンセッティングが終わったらいよいよ花材をアレンジしていきます。先ほど描いた円の下絵からはみ出さないように、円の中をピンクの花で埋めていきます。花の塗り絵をしている感覚で楽しみましょう。
花材の茎を4~5cm程度でカットします。
ポンポンマムのピンクを円の中に挿します。二つのマムをくっつけて隣同士に挿したりしてグルーピングを適宜使用するとバランスよく仕上がります。
ライトピンクのマムを入れます。
顔の小さなマムを入れます。
ブバリアを入れます。ブバリアの茎は柔らかく細いために刺さりにくいことがあります。適宜ワイヤを使用してください。
メリルジプソを入れます。メリルジプソの茎が短い場合はワイヤを使用して茎を継ぎ足して挿します。
ピンクの円の外側に白いマムを入れます。
顔の小さいマムを入れます。
隙間にブバリアとメリルジプソを入れます。
ボックス型のアレンジメントを綺麗に作るコツは花の高さにあります。器の淵ギリギリになるようにすべての花の高さを揃えます。
STEP.3極小花と実物で境界線をくっきりと
せっかく綺麗に下絵の線を引いても、その上に挿した花のラインが揃っていないと境界線がぼやけてしまい、何を描いているのかわからなくなってしまいます。最後の仕上げの作業、極小花と実物を使って、下絵の淵の部分を綺麗に整えて、くっきりとした境界線を作りましょう。
白、ピンクそれぞれクリスパムの花の部分だけをカットします。
隙間が空いているところや、綺麗な円のラインになっていないところを継ぎ足すように花と花の間に白ピンクそれぞれのクリスパムを詰め込みます。
ペッパーベリーの実の部分をカットし、同じように隙間に詰めていきます。
最後に白色・桜色の二色の水引を使って、器をぐるりと一周させて結びます。
今回は、蝶結びにしていますが、水引ならではの結切りにしたり、平梅にしたりしてもいいでしょう。蝶結びだと少し洋風の雰囲気で和洋折衷に、結切りや平梅にするとより和のテイストが強くなります。
豊穣への感謝
いかがでしょうか?すべての花の高さが器の淵ギリギリになり、クリスパムなどの小花で境界線がくっきりとわかる円の形を描けていたら完成です。
神様へのお供え料理からはじまったおせち料理の歴史ですが、桃の節句や菊の節句、十五夜など、お供え料理であるおせちのそばにはいつも花の姿がありました。
豊かさを求めて、世界中を駆け抜けていた現代の私たちは、ウイルスの感染拡大によってその足を止め、立ち止まることを与儀なくされました。
新しい年のはじまりは食べ物だけでなくお花も添えて、豊かさを求めるばかりでなく、振り返ることができる喜びを、いつもよりもゆっくりと味わえるといいですね。
願い事をぎゅっと詰め込んで、おせち料理スタイルのボックスアレンジメント―
季節の変わり目の節句からはじめる花のある暮らし「佐藤俊輔のFLOWER STYLE」次回もお楽しみに。
今回ご紹介したおせちスタイルアレンジメントがキットで手軽に作れる、「マムのパステルお重キット」が発売中です。
こちらはお重に入って重ねることができるのでより和の雰囲気が濃い内容になっています。お重の中には市松模様と四角模様を描いていますが、キットの花材を同じように使って今回のような円の模様も作ることができますので、今回のFLOWER STYLEを参考にキットにオリジナルのアレンジを加えてみるのも素敵ですよ。
佐藤俊輔のインスタグラムでは撮影時のオフショットなども掲載しています。
文藝春秋が発行するライフスタイル誌「CREA」の公式サイト「CREA WEB」にて佐藤が提案するフラワースタイル「Playful Flower Life!」が好評連載中です。こちらの撮影でも「はなどんや」さんのお花を使用しています。
この記事を書いた人
- フラワーデザイナー 佐藤俊輔
- フラワーデザイナー。2014年モナコ国際親善作品展国内選考会において特別賞を受賞。2017年より「女性自身」(光文社)、2020年より「CREAWEB」(文藝春秋)にて季節のアレンジメントを連載。テレビ、ラジオ出演のほか伊勢丹メンズ館のディスプレイ装飾など、幅広く活躍中。
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