ツタンカーメンのガーランド
ガーランドとは花を編みこんだり、紐でつなげて作る横長に垂れるアレンジメントです。クリスマスの時期に商店街やデパートなどの装飾で見かけたことがある方も多いのではないでしょうか?
ガーランドの歴史は古く、すでに古代エジプトでは棺やミイラに手向ける副葬品としてガーランドは一般的でした。古代エジプトの悲劇の少年王ツタンカーメン、その棺の中に王妃アンケセナーメンがヤグルマギクの花束を添えたというエピソードは有名ですが、ヤグルマギクは花束の形ではなく、さまざまな植物を編みこんだガーランドとしてそなえられていました。頭部や首元に掛けられたガーランドは見事なアクセサリーのようにも見えたといいます。
少年王の生涯の悲劇性を考えると、ヤグルマギクだけで作らた質素な花束のエピソードは黄金に輝く他の副葬品とのコントラストがとてもドラマチックですが、沢山の花に囲まれて眠りについた事実の方がずっとあたたかく感じられます。
人類が作った最古級のフラワーアレンジメントであるガーランドは、人々の歴史や思いとともに様々に形を変えてきました。短いガーランドをひとつながりの円にし、終わりのない形に永遠の意味を込めたものがリースになり、魔除けや繁栄、収穫への思いを込めて祭壇や暖炉を飾る縦長のガーランドは「揺れる」という語源のスワッグと呼ばれるようになったといわれています。
19歳の王の最後にささげられた古代のフラワーアレンジメントに思いをはせてー
佐藤俊輔のFLOWER STYLE第9回は、そんなつながりの深いガーランド、リース、スワッグの三つを一つに合体させた、「壁掛けオールスターのアレンジメント」を制作します。
生花×造花×ドライ=セミフレッシュアレンジメント
使用する生花はこちら。
左から、ケイトウボンベイピンク系(ピーチフリル)、エリンジュームシリウスクエスター(白グリーン)、ワックスフラワーマヤホワイト、ファウンテングラス、セロシアローズベリーパフェ(濃ピンク)、ユーカリテトラゴナナッツ。それぞれ3~4本程度が適量です。下の方についている花や葉を取り除いておきます。
その他の花材はこちら。
左から、アンティークベリーブランチ、フロストフラットレースファーン(グリーン)、ベリーブランチ(ダークオレンジ)。レースファーンは2本、その他は1本ずつが適量です。
左から、シュクルリーローズ(ANT.PK)、シュクルリープリマローズ(CREAM)、ナンキンハゼ。ローズはそれぞれ2本ずつ、ナンキンハゼは5~6本が適量です。
生花と造花、ドライなどの花材を一緒にアレンジする、サトウシュンスケフラワーデザインオリジナルの「セミフレッシュアレンジメント©」。今回は水をつけずにそのままドライになる生花を選んでアレンジする「セレクト法」です。
佐藤が選ぶMVP花材「ユーカリテトラゴナナッツ」
シルバーに輝く葉とカクカクとしたテクスチャーの実が特徴的なユーカリ。葉に厚みもあるので、ドライフラワーにしても形が崩れにくくきれいな状態でドライになってくれます。ユーカリはたくさんの品種がありますが、大きな実がついた品種が出回るのは限られた時期なので、お店などで見かけたらぜひ購入してみてください。実の部分だけを切って、アンティークなコップやカゴに入れてアレンジしてもオシャレに空間を演出できますよ。
STEP1.造花のグリーンにドライをつけてハイブリットグリーンへ
ワイヤーを使って様々な素材を取り付けることができるのが、アーティフィシャルフラワーのいいところ。今回はベースとなるレースファーンに白い実が可愛いナンキンハゼをあらかじめとりつけて、アーティフィシャルフラワーのグリーンをよりリアルなハイブリットグリーンにします。
ナンキンハゼの茎にワイヤーを取り付けます。
ワイヤーを使ってレースファーンにナンキンハゼを取り付けます。
2本のレースファーンを葉があまり重ならないように、上下にずらして茎を結び一つの長いレースファーンにします。
STEP2.180°を意識して背面を作るスワッグ
レースファーンの葉先から飛び出ないように少し下にずらしてアンティークベリーブランチを重ねます。スワッグは背面があるので、机などにおいてアレンジすると楽に作れます。
続いて、ワックスフラワーを重ねていきます。葉先に近い上の方、真ん中、手元に近い下の方とまんべんなく重ねていきます。
ローズやセロシアを同じように上下差がでるようにまんべんなく配置します。
ケイトウ、エリンジューム、ファウンテングラスを入れます。顔の大きいシュクルリーローズはスワッグの上中下のうち、中の部分にいれるとバランスが取れます。
茎を縛ってスワッグ部分の完成です。
STEP.3リース土台を使わない編みこみリース
ベリーブランチの茎を利用して、リースの土台を作ります。サンキライリースなどの土台を別に使用しないため、軽やかなリースに仕上がります。
ベリーブランチの茎をとりはずして3本に分解します。
一番長い茎を使って、円形にして絡ませていきます。茎にワイヤーが入っていて自在に曲がるので簡単にリースにすることができます。
残った2本のベリーも、ベリーが重なりすぎないように位置を見ながら、本体の円に絡ませていきます。
ユーカリを6~8cm程度の長さになるように切り分けます。
切ったユーカリの茎をリースの隙間に差し込んで固定します。
茎が太くてうまく隙間に入らず固定できない場合はワイヤリングしてリースに取り付けます。
エリンジュームも同じようにカットします。下準備で茎の下の方の葉を処理した場合は、それを使用してもOK。
リース土台やユーカリの隙間に差し込んで固定していきます。
ナンキンハゼも隙間に差し込みます。
ワックスフラワーも同じようにカット、これも下葉を処理した場合はそれを利用してもかまいません。
これでスワッグとリースが完成しました。
最後にスワッグの茎にリースを通します。
スワッグの花と重ならない丁度いい位置を見つけたら、スワッグの茎とリースを固定します。
壁掛け三種が合体したオールスターアレンジメント
いかがでしょうか?リースを引っ掛ける位置によってアレンジ全体の表情も変わりますので、気に入った位置になるまで調整をしてみましょう。
ハロウィーンが終わるとクリスマスの時期がやってきます。お気に入りのオーナメントやクリスマス飾りを見つけたら、スワッグ部分やリース部分に少しずつ飾り付けていけば、クリスマスの壁飾りとしても活躍します。
ガーランドから始まるフラワーアレンジメントの歴史は、巻き付けたり、身につけたり、掛けたり、吊るしたりして、いかにして花を人のそばに置いておくかを模索してきた歴史のように思います。
自然界に花が少なくなるこれからの季節だからこそ、アレンジメントして上手に室内にお花を飾り付けましょう。
冬からはじめる花がそばにある暮らし「佐藤俊輔のFLOWER STYLE」次回もお楽しみに!
今回ご紹介したリースと同じ、土台を使わない軽やかなアレンジ方法で作るクリスマススペシャルリースのキットが発売開始となります。同じテイストのツリーキットも併せて飾って、花で迎えるクリスマスをぜひお楽しみください。
文藝春秋が発行するライフスタイル誌「CREA」の公式サイト「CREA WEB」にて佐藤が提案するフラワースタイル「Playful Flower Life!」が好評連載中です。こちらの撮影でも「はなどんや」さんのお花を使用しています。
佐藤俊輔のインスタグラムでは撮影時のオフショットなども掲載しています。
この記事を書いた人
- フラワーデザイナー 佐藤俊輔
- フラワーデザイナー。2014年モナコ国際親善作品展国内選考会において特別賞を受賞。2017年より「女性自身」(光文社)、2020年より「CREAWEB」(文藝春秋)にて季節のアレンジメントを連載。テレビ、ラジオ出演のほか伊勢丹メンズ館のディスプレイ装飾など、幅広く活躍中。
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