経済不安に輝いたマンハッタンのクリスマスツリー
2011年のニューヨーク。クリスマスを家族で祝うためにほぼすべてのお店が閉まったマンハッタンは、想像以上に心細いものでした。
薄暗く寂しい5番街。ロックフェラーセンターのクリスマスツリーがひときわ美しく輝いていたのが印象的でした。
映画ホームアローン2でクリスマスに一人ぼっちになってしまったマコーレ・カルキンが母親と再会を果たすのもこのツリーのたもとです。
ニューヨーク州郊外から生のモミの木が切りだされ作られる、高さ30mを超える巨大な光のモニュメントはロックフェラーの財の象徴のように見えますが、はじまりは小さな6mの小さなツリーだったことをご存じでしょうか?
時は大恐慌時代にまでさかのぼります。1929年、ウォール街で株価が大暴落したことで、すでに摩天楼が登場していたマンハッタンでは、その建築計画がほぼ中止となり新たなビルの建設もなくなったことで、建築労働者が大量に失業しました。
ロックフェラーセンターの建築が始まったのは、その翌年の1930年。ロックフェラーは先行きの見えない経済の混乱の中、労働者を救済するためにロックフェラーセンター建設を断行。建築までの9年間で75,000人が働くことになりました。
1931年のクリスマスイブの給料日、建築労働者たちは職があることに感謝を込めて、お金を出し合い6mの小さなクリスマスツリーを飾ったのがロックフェラーツリーの始まりです。
あれから90年の月日が流れ、世界恐慌は歴史となりましたがロックフェラーツリーは今も輝き続けています。
世界は今COVID-19感染拡大によって新たな経済不安に突入しています。大恐慌時時代に生きた人のように、不安の中で生まれた感謝の気持ちや、驚かせたい気持ち、皆で何かを成し遂げたい気持ちが、マンハッタンのツリーのような形で未来に残せたら素敵ですね。
訪れたすべての人を受け入れ、笑顔にし、点灯式は世界のニュースになるー
そんな世界一のツリーに思いをはせて
佐藤俊輔のFLOWER STYLE第8回、「今飾りたい、花いっぱいのデイリークリスマスツリー」はじまります。
生花×造花×ドライ=セミフレッシュアレンジメント
使用する生花はこちら。
左から、センニチコウ(白)スプレー、ヒペリカム(ココカジノ・ピンク)。センニチコウは5輪程度、ヒペリカムは2本程度が適量です。
その他の花材はこちら。
左から右、左下から右下へ、ガラスキューブM(WHITE)、サンキライリース7cm、シナモンスティック4cm、ハンドメイド用リボン(ベージュ)、ハンドメイド用リボン(ブルー)、ブリック、プリミント(グリーン)、アンデスアジサイブルー系3色、ペッパーベリー(クリアグリーン)、スモークベリーショート、オーキッド(セロリ)、ローズバンチ(クリームピンク)、ローズバンチ(グリーン)、ローズバンチ(ピーチ)、ハイドレンジアブーケ(モーブ)、基本的に1本、もしくは1束ずつが適量です。プリザーブドのアジサイは握りこぶし半分程度、ペッパーベリーはさらにその半分程度、シナモンスティックは8~10個程度、ブリックは2本が適量です。
生花と造花、ドライなどの花材を一緒にアレンジする、サトウシュンスケフラワーデザインオリジナルの「セミフレッシュアレンジメント©」。今回は水をつけずにそのままドライになる生花を選んでアレンジする「セレクト法」です。
佐藤が選ぶMVP花材「センニチコウ(白)スプレー」
日本の厳しい暑さにも負けずに、お花が寂しい7月8月の花壇を彩ってくれるセンニチコウ。お花に見える部分は、苞なので色褪せず長持ちします。「千日紅」という名前の通り、千日もの長い間紅色が続くとうたわれたのも納得です。このセンニチコウは、ドライフラワーとして活用するのが有名ですが、最近ではプリザーブドフラワーのセンニチコウも出回るようになりました。生花やドライフラワーにはない、柔らかな質感とカラーリングは見ていてわくわくします。佐藤俊輔のFLOWER STYLE vol.4のHANA CUBEアレンジメントではそんなプリザーブドのセンニチコウを使用していますので、ぜひチェックしてみてください。
STEP1.ブリックセッティングがグリーンセッティングを決める
綺麗なアレンジメントを作るコツは、綺麗なグリーンセッティングをすることです。綺麗なグリーンセッティングには、綺麗なブリックセッティングが欠かせません。
器の幅に合わせてブリックをカットします。
器の高さよりも1cm~1.5cmくらい低くブリックをカットし、器に入れます。低くするのは次に重ねるブリックを安定させるためです。
新しいブリックを用意します。縦の高さはそのままで横幅を器の幅に合わせてカットし、器の中のブリックと重ねます。
重ねたら、オアシスの中心から、器の淵に向かって斜め下にカットする要領で、まずは四隅の角四カ所を斜め下に向かってカットします。
四隅を斜め下にカットしてできた、新たな角を次々に落として円錐形に仕上げていきます。
上から見ると、余分な部分がわかりやすいです。
360°どこから見ても綺麗な円錐形になっていれば完成です。
STEP2.グリーンセッティングがアレンジメントの良しあしを決める
ミントの葉を茎1~2cmを残してカットし、まんべんなく挿していく。
このとき、アレンジの下の方は葉を挿す角度を水平に、アレンジの上にいくほど、角度を垂直に近づけていくと綺麗に仕上がります。頂点に近いところはほぼ垂直の角度で刺します。
正確にはグリーンではないですが、アジサイもミントと同じように茎1~2cmにカットし、ブリックが露出しているところを隠すようにまんべんなくさしていき、アレンジする土台を完成させます。
ブリックが露出しているところが目立たなくなるくらいにミントとアジサイを敷き詰められば土台の完成です。
STEP3.順番と場所を掴めば、ツリーの形がきまる
ローズバンチ三種をそれぞれ茎1~2cmほど残してカットして、ブリックに挿していく。大きい花をアレンジの下に、小さい花やつぼみは上の方に挿していく。グリーンと同じようにこれ以降の花材もすべて、アレンジの下は水平に、アレンジの上にいくほど垂直に近くなる角度で挿していく。
適宜、グルーピング(すべてをまんべんなく等間隔に挿すのではなく、同じ種類の花をくっつけて挿す手法)をして、アレンジのポイントを作ってもOK。
次に、シナモンスティックの穴に26番の茶地巻きワイヤーを通す。
穴の付け根でワイヤーをねじり足を作り、アレンジに挿していく。
挿すときは、シナモンスティックの向きが揃わずにランダムになるように挿していく。アレンジの上にいくほどシナモンスティックを横向きにアレンジするのが難しい(円錐形の形から飛び出してしまう)ため、アレンジの上は縦方向になるように挿していく。
スモークベリーを茎1~2cmほど残し、アレンジメントに挿していく。茎が柔らかく曲がって挿しにくい場合は、適宜ワイヤリングをして補強する。
プリザーブドのアジサイ2種をワイヤリングしていく。バラバラのアジサイの花を、軽くねじるようにしてまとめ首元を26番茶地巻きワイヤーで巻き付ける。
アジサイの茎1cm程度を残し、余分な部分をカットしワイヤーと残したアジサイの茎を一緒にねじり足を作る。
他の花材と同じように挿していく。大きめのものと小さめのものを作っておくと、それぞれアレンジメントの上下で使いやすい。
ペッパーベリーをある程度のかたまりでカットして、アレンジにつけ、落ちないようにUピン型にした26番地巻茶ワイヤーでとめていく。
オーキッドを茎2~3cm残してカットし、アレンジに挿していく。オーキッドも大小あるので大きいものは下に、小さいものは上に配置していく。
生花以外の花材をすべて挿し終わったら、リボン2種をカットし、2本を重ねて花器の淵に巻きます。花器の角の所で結ぶと緩みなくしっかりと結べます。
今回はリボン結びではなく、シンプルに一重結びにします。
サンキライリースをカットして解きます。
解いたサンキライのつるをツリーに絡ませます。
最後の仕上げに生花のセンニチコウとヒペリカムをそれぞれ茎2~3cm程度のところでカットし、アレンジの空いているところに挿して完成です。
いつもそばに置いて楽しむ卓上フラワーツリー
いかがでしょうか?360°色々な角度から見渡してみて、綺麗な円錐形の形になっていれば完成です。今回のツリーのような縦型のアレンジメントは、場所をとらずちょっとしたスペースに飾れるのがポイントです。
株式会社ネオマーケティングの調査によるとCOVID-19感染拡大によって新たにリモートワーク制度を導入した企業は全体の39.9%に及んだといいます。
自宅のパソコンの前に座って過ごす時間が増えた今、ミニツリーをそばに置いて、好きな時間に癒されながら仕事をするのもいいかもしれません。
自宅でしかできない働き方をフラワーツリーとともにー
今だからこそはじめたい花のある暮らし「佐藤俊輔のFLOWER STYLE」次回もお楽しみに!
材料はこちら
2020/9/1 はなどんやキット発売開始!
佐藤俊輔のインスタグラムでは撮影時のオフショットなども掲載しています。
文藝春秋が発行するライフスタイル誌「CREA」の公式サイト「CREA WEB」にて佐藤が提案するフラワースタイルが好評連載中です。こちらの撮影でも「はなどんや」さんのお花を使用しています。
この記事を書いた人
- フラワーデザイナー 佐藤俊輔
- フラワーデザイナー。2014年モナコ国際親善作品展国内選考会において特別賞を受賞。2017年より「女性自身」(光文社)、2020年より「CREAWEB」(文藝春秋)にて季節のアレンジメントを連載。テレビ、ラジオ出演のほか伊勢丹メンズ館のディスプレイ装飾など、幅広く活躍中。
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