造花(アーティフィシャルフラワー)の品質は、メーカーや扱われるフローリストの方々の日々の研鑽によって年々良くなっています。お客様からも、まるで生花と見間違えたというお声をいただくことも多くなり、取り扱ってくださる方が増えていることを日々実感しています。
そこで、今回は初めて造花を扱われる方必見の「リペア(修復)・メンテナンステクニック」をご紹介!造花は海外で作られて長期間輸送されている間に、ちょっと潰れてしまったり、ほつれてしまったりすることがあります。そんな時は、こんな風にちょっと手をかけてあげると見違えるように素敵になりますよ。
花びらが潰れている
花びらが垂れ下がっている(バラ)
花びらが垂れ下がっている(ユリ)
花びらが折れ曲がっている
花びらがほつれている
花びらが潰れている
左上と中央の輪がかなり潰れしまっています。
潰れた形を押し戻します。お花の根元あたりを押し潰すように揉みほぐし、形を整えます。かなり本気で潰すくらいに押してください。
キレイに形が整いました。
花びらが垂れ下がっている(バラ)
花びらの枚数が多いバラや芍薬は、外側の花びらが下がってしまっている場合があります。リペアの結果がわかりやすいように、垂れ下がっている花びらにペンで印を付けました。
垂れ下がった花びらの根元に、生花用接着剤を軽く横一本線を引くくらい塗ってください。
花びらを上に持ち上げ、生花用接着剤を塗った根元のあたりを10秒くらいぎゅっと握ってください。1枚ずつキレイに・・・と考えずに、ただ持ち上げて握るような簡単な感覚で大丈夫です。
生花用接着剤はとろりとして粘り気があり、粘着はするけどすぐに固定されません。もしシワになったり、ズレてしまっても1時間くらいの作業であれば貼り直すことが出来ます。やり直しがしやすいので、プリザーブドや造花など生花以外のアレンジにもおすすめの接着剤です。
垂れ下がった花びらが接着され、綺麗な状態になりました。
生花用接着剤とグルーガンの比較
リペアにあたって、グルーガンでのリペアも試してみましたので、生花用接着剤との比較もお伝えしてみようと思います。
■使用感:グルーガンでもリペアは出来ますが、グルーを付けて花びら同士を接着させるために指でなじませる時に熱かったり、接着が強すぎてやり直そうとすると花びらが破れてしまったりと、生花用接着剤よりも扱いにくいです。
同じ分量(横に約3cm厚みも同じくらい)を紙の上に出し、上からセロファンで抑えて比較しました。
■伸び方:生花用接着剤の方が広い範囲に伸びている事が分かります。造花の花びらを接着するには、柔らかく伸びてくれるこの性質がとても役に立ちます。グルーガンの方は、付けた部分からあまり広がらず、接着したい部分全てにボンドを付けなくてはいけません。あまり伸びないため、接着したときの厚みが布地に浮き出てしまい、仕上がりがボコボコしてしまいます。
■固まり方:数秒置いて、セロファンを持ち上げてみると、グルーガンの方は早々に固まっています。生花用接着剤は粘り気がありますが、剥がせるので花びらのちょっとした位置を直したいときにも助かります。
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総合的に見て、生花用接着剤の方が使いやすいという結果になりました。生花用接着剤、おすすめです!
花びらが垂れ下がっている(ユリ)
バラや芍薬などに比べて花びらの枚数が少ないユリは、折れたり垂れ下がったりした花びらが特に気になりますよね。今回ご用意しているユリは、品質も良くブライダル、ブーケに人気の八重咲きのユリですが、その繊細な素材のためどうしても花びらが折れやすくなっています。
修復するのは矢印の部分。外側の2枚が折れてピラピラとしてしまっています。他の花材で抑えたりしてそのまま使うことも出来ますが、八重咲きのユリは直せるのでぜひリペアにチャレンジしてみてください。
生花用接着剤を折れた花びらの根元につけ、上の花びらと一緒にぎゅっと10秒くらい手で抑えて下さい。今回のように折れている花びらが複数あった場合は、バラとは違って1枚ずつ行います。
折れていた花びらが上に持ち上がって、横から見てもキレイな姿になりました。
花びらが折れ曲がっている
造花はポリエステルなど布のような生地で出来ている製品が多く、お洋服同様折れ曲がってシワになっている場合があります。画像の★部分は外側に折れ曲がり、▲の花びらは●が折れ曲がって上に乗っている状態。
花びらを広げながらスチームアイロンをかけます。今回は高温で直接行いましたが、花びらの材質によっては、低い温度や上にハンカチ等の布をかけて。
手前の花びらには少しだけ折れ線が残りましたが、★のところはまっすぐキレイになりました。折れ線が気になる場合は、裏面からもアイロンをかけて頂いたり、アイロンスムーザーのようなアイロン周りの補助商品のお試しもおすすめです。
花びらがほつれている
布(ポリエステル)の造花は、端がほつれている場合があります。商品の特性上やむを得ずあまり気にされないことをおすすめしますが、もし気になる場合はカットしてメンテナンスしてみましょう。画像は、ほつれのあるユリの花びらに◆の印をつけたものです。
よく切れる布用やクラフトハサミで、ほつれている部分だけを滑らかなラインになるようにカットします。
カットしたままだと、また自然にほつれてきますので、ピケ(ほつれ止め)をカットした部分に少量塗っておきます。
ほつれの部分が無くなって、キレイになりました。
ほつれは、アレンジされて生き生きと飾られるとあまり目立ちません。実は、そこまで気にされなくても大丈夫だったりします。
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造花は、生花と違って枯れることのない扱いやすい商品です。その分、寸分違わず製造される工業製品のように捉えられることも。実際は1つ1つ手作業で作られていて個性があるんですよね。
造花の取扱いを始めてまだ数年の当店のメンテナンス方法ですが、造花の個性を活かしていただくヒントになればと思います。(もっと良い方法があるよー、というご指導も募集中です!)